TOC(制約理論)とは?ボトルネック解消の方法 | ドラムバッファーロープ

2018年12月3日

TOC制約理論

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TOC 制約理論とは

TOC(Theory of Constraints : 制約条件の理論)は, イスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラット博士によって提唱された生産管理や経営の全体最適化の改善手法で, サプライチェーン・マネジメント(SCM)で用いられる理論のひとつです.
物理学者というビジネス書の著者としては異色の経歴を持つゴールドラット博士の著書『ザ・ゴール』は, 全世界で1000万人以上が読んだベストセラーとなっています.

エリヤフ・ゴールドラット博士はイスラエルの大学で物理学を専攻していましたが, 工場経営をしている知人から生産スケジュールについて相談されたところ, 物理学の研究で培った発想や知識を駆使して, その問題の解決方法を導き出したとされています.
それがきっかけとなり, 博士はさらに生産スケジューリング法とそのソフト「OPT」を開発しました.
その後, ゴールドラット博士は, それらの基本原理を分かりやすく物語調に解説した小説『ザ・ゴール』を1984年に出版しました.
小説としても読みやすく, 読んでいるうちに制約理論がどのようなものか段々分かってきます.

ザ・ゴールでは制約理論を工場や子供のハイキングなどと照らし合わせ分かりやすく解説しています.
TOCの中で重要になってくるのがボトルネックスループットです.
スループットとは売上から資材費を取り除いた利益を指しており, TOCではこのスループットの最大化を目指します.

ボトルネックとスループット (ハイキングの例)

ザ・ゴールの中ではこのボトルネック工程が全体のスループットを決定することを子供のハイキングを例に説明しています.
ザ・ゴールの主人公アレックスが子供たちと参加したこのハイキングでは, 隊列を組んで目的地を目指します.

このハイキングの隊列と工場の製造プロセスとの類似性を見出した主人公のアレックスは,
列の先頭を材料を投入し生産開始する最初の工程とし, 最後尾の最終工程を経て製品の販売(=スループット発生)へと至る製造プロセスに例えてスループットを増加させる方法を考察します.

TOCハイキングの例

ハイキングのスタート時の列は時間の経過とともに長くなっていきました.
これは子供たちの歩く速度に変動があるためです.
歩くのが遅いハービー君の前は間隔が空いてしまい, 先頭との差がどんどん開いていきます.
最後尾を歩くアレックスはハービー君の歩行速度に合わせて歩いているため, 最後尾のスピードも低下しています.
工場に例えると材料投入から製品が出来上がり販売されるまでの時間がかかり全体のスループットが低下した状態です.

TOCハイキングの例-スループットとボトルネック

更に原材料の投入から製品として販売されるまでが長くなると, 仕掛品や部品在庫が増加してしまいます.
在庫が増えれば在庫の維持コストが必要になります.
また, 遅れを取り戻そうと前の工程に追いつこうと急ぐのにも本来使わなくていい余分なエネルギーを使うことになり, 業務費用が増加してしまいます.

この隊列の全体の速度(スループット)は一番歩くのが遅いハービー君(ボトルネック工程)の速度によって決まることに気づいたアレックスは, 列全体の速度(スループット)を増加させるための対策としてハービーを先頭に並べ替えます.

ボトルネックを先頭に変更
一番歩くのが遅いハービーを先頭にすることで列の間隔が開き長くなるということはなくなりました.
次に全体のスピードをもっと上げるためにはどうやってハービーのスピードを上げられるかが課題になります.
ハービーは重たいリュックを背負っていたため, その負荷を全体で分散することにしました.

ハービーの負荷を分散

ボトルネックの負荷を軽くしたことにより, スピードが上がり全体の速度(スループット)も増加しました.

TOCの改善ステップの第一ステップはまずこのハイキングの隊列で言うところのハービー君(制約条件)を見つけることから始まります.

実際の工場の工程ではハイキングの隊列のようにボトルネック工程を先頭に持ってくるということはできません.
そこで出てくる考え方がドラム・バッファー・ロープの考え方です.

ドラム・バッファー・ロープ

ボトルネックが中間の工程に位置しており工程の順番入れ替えが出来ない場合は,ドラム・バッファー・ロープ(DRB)の考え方を用います.
制約工程が全体のペースを決めるようにし(ドラムでリズムを刻み), 全体のペースを制約工程に合わせます.
又, 制約工程と先頭はロープ(指示)で結びます.
先頭の材料を投入して製造する工程が必要以上に先に進まないために指示し, コントロールする必要があります.

制約工程が前の工程の遅れなどの影響を受けて止まることがないように時間的な余裕(バッファー)を設けます.
ハイキングの例で言えば, 全体のペースを落とさず進むためにはハービーの前を歩いている少年が靴紐を結びなおしたり転んだりした場合でも, ハービーが追い付いて止まることがないようにしなければなりません. これは一番歩くのが遅いハービーが止まってしまった場合, その遅れをリカバリーできないためです.

ドラムバッファーロープ

 

TOC 制約理論の改善ステップ

TOCの改善ステップは以下のように進めていきます.

  1. 制約条件の特定
  2. 制約条件の徹底活用
  3. 他の全プロセスを制約条件プロセスに従わせる
  4. 制約条件のスループットを強化
  5. 1-4を繰り返す

【関連書籍】
ザ・ゴール以外にもエリヤフ・ゴールドラット博士の著作は参考になるものが非常に多くあります.

ザ・ゴールでは読みやすいコミック版も出版されています.
コミック版は活字が苦手な人にも直感的に制約理論を理解してもらうために効果的かもしれません.
ザ・ゴール2では思考プロセスについて書かれています.