MSA(測定システム解析)~Gage R&Rとそのやり方~

2019年3月15日

GageRR

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MSA(測定システム解析)とは

特定の部品や製品に対して測定を行うと多かれ少なかれ誤差が生じます.
測定で重要なことは, その信頼性です.
同じ人が繰り返し測定した場合や, 別の人が測定してた場合で結果が大きく異なっていては測定の信頼性が保証できません.

発生する誤差を統計的に解析し, 測定のばらつきを把握して測定の信頼性を高めるために行われるのが測定システム解析(MSA : Measurement Systems Analysis)です.
このMSAは主に自動車産業を中心とする製造業で活用されています.

測定システム解析(MSA)は, 部品を繰り返し測定するような計測システムに焦点を当てています.
繰り返し測定するような計測システムの具体例としては, ノギスやマイクロメーターでの寸法検査などがあります.



測定のばらつきと評価

MSAでは測定のばらつきを, 偏り(Bias), 直線性(Linearity), 安定性(Stability), 繰り返し性(Repeatability), 再現性(Reproducibility)の5項目で評価します.

偏り(Bias)

偏りとは, 基準値からのずれのことです.
測定値と基準値(参照値)がどれくらい近いかで評価します.

偏り

 

直線性(Linearity)

測定範囲内での偏りの推移です.
すべての基準値(参照値)に対して, ゲージによる測定がどれくらい一貫しているかが評価されます.

 

安定性(Stability)

測定値の経時的なばらつきのことです.
Xbar-R管理図やX‐Rs管理図を用いることで偏りの経時的な変化を見ることができます.

繰り返し性(Repeatability)

同一部品, 同一特性のものを, 同一の測定者が同一計測器で数回測定した際のばらつきです.
EV(Equipment Variation), システム内変動とも呼ばれます.

 

再現性(Reproducibility)

同一部品, 同一特性のものを, 異なる測定者が同一計測器で測定して得られた計測値の平均値のばらつきです.
AV(Appraiser Variation)やシステム間変動とも呼ばれます.

再現性

 



Gage R&R

Gage R&R(Gage Repeatability and Reproducibility)とは, 測定の繰り返し性再現性を評価する手法です.

Gage R&Rのゲージ(Gage)とは, 計測を行うために使用される何らかの装置・器具のことです.
例えばノギスやマイクロメーターなどもこれに該当します.

測定全体のばらつきは部品自体のばらつきと測定システムのばらつきの二つから成り立ちます.
ばらつきは変動とも言い換えることができます.
測定システムの変動はゲージによる変動と測定者による変動を有しており, ゲージR&Rではこの二つを合成した指標(GRR)として評価します.

測定全体のばらつき=部品間のばらつき+GRR
GRR:測定装置のばらつき+測定者によるばらつき

測定のばらつき

 

Gage R&Rのやり方

通常10個の部品を複数の測定者が3回ずつ測定した結果からゲージR&R(GRR)を求めます.

GageR&Rのやり方

  1. 複数(例では3人)の測定者に10個の部品を各部品につき3回ずつ測ってもらい, そのデータを記録します.
  2. 各部品の測定結果の平均を求めます.
  3. 各測定者の各部品3つの測定結果の範囲R(最大値-最小値)を求めます.
  4. 各測定者の範囲Rの平均を求めます(=Rbar)
  5. 上で求めた3人の範囲Rbarの更に平均を求めます.
  6. 測定者毎のデータ(10部品×3回=30データ)の平均を求めます. (=Xbar)
  7. 上で求めた測定者毎のデータの平均から全体のデータの平均を求めます.
  8. 10個の部品の平均の最大値-最小値で, 各部品の平均の範囲Rpを求めます.
  9. 測定者毎のデータの平均Xbarの最大値-最小値で, 測定者毎のデータの平均の範囲を求めます.(=Xdiff bar)
  10. 上の過程で求めた数値を下の数式に代入して, 測定装置のばらつきEV, 測定者によるばらつきAV, 部品間のばらつきPV, GRR(測定装置のばらつき+測定者によるばらつき), 全変動TV, %GRR(全変動TVに対するGRRの比率)を求めます.
    再現性AVの式に出てくるrは測定回数(上の例では3), nは部品数(例では10)です.

GageR&R数式

係数K1, K2,K3 (出典:MSA第4版スタディガイド)

GRR係数一覧

 

%GRRは10%以下であれば良好と判断できます.
一般的に10%~20%付近は許容範囲とされ, 20~30%が限度になることが多いです(具体的な限度は用途によります).
30%以上の場合は測定システムの改善が必要です.
また, 測定する部品自体のばらつきが小さいと全変動TVが小さくなるため%GRRは大きくなってしまいます.
そのためサンプリングする部品は恣意的に差のあるものを選ぶ方が測定システム自体のばらつきを評価しやすくなります.

測定システム解析(MSA)はIATF16949という自動車業界のセクター規格の中でコアツールのひとつとして数えられています.

MSAについて特化した記載がある書籍というのは品質の本の中でも非常に限られているため,
書籍で勉強したい場合は上の2冊がお勧めとなります.