【改善活動の基本5S】なぜ5Sが必要なのか?5S活動のメリット

改善活動の基本5S

整理・整頓・清掃に関する活動は, すべての仕事の基本を成すものとして, 多くの企業で取り組まれています.
この活動は, 3S活動や5S活動等の名称で取り組まれているケースが多く見られます.

3Sとは整理・整頓・清掃のローマ字の頭文字を取ったもので3つの総称を表し,
5Sとは整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)の5つの総称を表します.

マネジメントの父と呼ばれるピーター・ドラッカー教授も「働く人の仕事ぶりにとってきわめて重要な意味をもつものが, 職場の整理整頓である」と著書の中で述べています.
5Sは現場での改善活動の基礎であることはもちろん, 企業経営に於いても大きな意味を持ちます.

5Sとは

5Sは整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)の頭の文字を取ったものです.
それぞれの意味は下表のようになります.

整理 必要なものと不要なものを区別し, 不要なものを処分すること.
不要なものは置かないこと.
整頓 必要なものが誰にでもすぐに取り出せる状態にしておくこと.
どこになにがあるのか把握できるようにすることで, 探す時間などのムダを省くことになる.
清掃 ゴミなし・汚れなしの状態にすること.
ほこりやごみは機械故障の原因にもなる.
職場も設備もピカピカに磨き上げると汚すとそこが目立つので汚せなくなる(⇔割れ窓理論).
清潔 整理・整頓・清掃の徹底によって清潔な職場環境を維持する.
決められたことを, 決められた手順で正しく実行できるように習慣づけること.

5Sの効果

5S活動には様々な効果があります.

①作業効率の向上
不要物を場当たり的に置いてしまうことがあると, 作業者を動きにくくし, 仕事の効率を悪化させてしまうことがあります.
5Sを行うことでこれらは解消されます. 他にも5Sの結果として, 作業中の動線が短縮され, 作業スピードが上昇するケースもあります.
②在庫管理業務の効率の向上
必要なもの・不要なものをはっきりと分け, 過剰在庫と過剰な置き場を排除することで, 在庫回転率がアップします.
置き場の定位置化や標準化により, 棚卸業務のIoT・ICT活用などもスムーズに導入することができます.
棚卸などの在庫管理業務を効率化するために, 従来の手入力からバーコードやRFIDタグ, カメレオンコードなどを用いたシステムへの切り替えが盛んに行われています. これらIoT/ICTツールの導入しシステムを構築する際は, 不要物と必要物が明確にすることや棚卸手順が標準化されている(置き場が決まっている)ことが特に重要になります.

③職場に潜むムダ発見する目を養う
整理・整頓・清掃により職場がきれいになるだけでなく, ムダに気付く人材育成にも効果があります.
トヨタ生産方式では, 作りすぎ・手待ち・動作・運搬・加工・不良・在庫という7つにムダを分類・整理し改善を行います.
これらのムダを改善するために様々な知恵や工夫を行うのですが, そもそもムダに気付かない・わからなければムダは排除できないでしょう.

④宣伝効果の向上
お客様から見てあの会社はいつもきれいだという良い評判は, 人から人へと口コミで広がっていきます.
逆に汚い仕事場は人に悪印象を与え, 取引などにも影響することがあります.

⑤モチベーションの向上
職場をきれいにすると, 社員ひとりひとりにきれいな職場を維持しようというモチベーションが向上します.
日本電産の永守重信社長の言葉に, 儲かっていない会社の共通点について触れたものがありますが,
その中で社員の士気が落ちていると工場も事務所も汚いことについても述べられています.

5Sと割れ窓理論

割れ窓理論とは, アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングが考案した「建物が割れているのを放置すると, 誰も注意を払っていないという印象になり, やがて他の窓もまもなくすべて壊される」との考え方です.

言い換えると, 荒れた個所が1か所でもあると, ぞんざいに扱っても良い気がしてきて他の箇所にも徐々に広がってしまうということです.

この割れ窓理論は職場の環境改善にも同様に働くとしてしばしば引き合いに出されます.

ビジネスでの割れ窓理論の例としてよく挙げられるのがアップル社とディズニーリゾートの話です.
1996年に業績不振に陥っていたアップル社にスティーブ・ジョブズが復帰した際は, 学級崩壊ならぬ社内崩壊と称されるほどの状態だったそうです. ジョブズ氏は職場の環境を徹底的に変えようと, 割れ窓理論を上げて, 遅刻の厳罰化や整理整頓などの意識改革を行い, アップル社の業績のV字回復に成功しました.

ディズニーリゾートでは, 小さな傷などの破損個所をおろそかにせず, 塗装の修繕などを夜間に頻繁に行っています.
また, ディズニーリゾートでは多くのカストーディアルキャスト(清掃に従事するキャスト)を擁しており, パークの清掃に力を入れています.
割れ窓理論で言えば, ひとつのゴミが落ちていることはポイ捨ての増加, 小さな傷や破損個所が放置されることは,その後も乱暴に扱われてしまうということにつながります. ディズニーリゾートでは, 清掃や修繕を頻繁に行うことで, 秩序が乱れてしまうのを防ぎ, 従業員のみならず来客者のマナー向上にも成功しているのです.

職場の環境のきれいさ・汚さは個々の心理や意識の持ち方に非常に密接な関係があります.
5S活動を通して, 職場に潜むムダ発見する目を養うなど,
単純にものを片付けるだけでなく意識面での改革も進められると更に5Sの意義を実感できるかもしれません.