品質の分類~ねらいの品質とできばえの品質, 狩野モデルとは~
品質要素の分類
品質の通常の分類には, 製品の企画・設計・製造・使用時と段階ごとに品質を分類した, 企画品質, 設計品質(ねらいの品質), 製造品質(できばえの品質), 使用品質などがあります.
また, 他の品質の分類として, 顧客の立場から品質を分類した, 当たり前品質, 一元的品質, 魅力的品質といった分類もあります.
企画品質
企画品質とは, 製品の企画段階で決まる品質で, 顧客が求めている品質を明らかにし, 製品コンセプトに盛り込む品質のことです.
設計品質
設計品質とは, 設計図や製品仕様書などに規定された品質で, ねらいの品質とも呼ばれています.設計者が販売, 技術, 原価などを総合的に判断して決めたものです.
設計品質の良し悪しは, 製品仕様が顧客の要求と十分に合致しているかどうかによって決まります.
製造品質
製造品質は, できばえの品質, 適合品質とも呼ばれます. これらは実際に作業標準通りに作業して製造されたものの品質です. 製造品質の良し悪しは, 設計品質として要求された品質特性値に合致しているかどうかで決まります.
使用品質
使用品質とは, 顧客が製品を購入して実際に使用した際の品質です.
製品使用時に期待された機能が発揮されるかどうかで評価される, 使用者が要求する品質です.
顧客の立場からの分類・狩野モデル
通常の品質の分類のほかに, 顧客の満足度や購買意欲に与える影響を考慮した品質の分類があります. それが後述の狩野モデルです.
狩野モデルは顧客の求める品質をモデル化したもので, 東京理科大学の狩野紀昭氏が提唱したものです.
このモデルは品質のみならずマーケティングに於いても適用でき, 世界でも高い評価を得ておりKano Modelとして知られています.
狩野モデルでは, 顧客の立場から要求する品質について, 「魅力的品質」「一元的品質」「当たり前品質」「無関心品質」「逆評価品質」の品質要素に分類します.
一般に顧客の満足度は, 品質の充足によって向上するものと考えられていましたが, 狩野モデルではその品質がどの品質要素に該当するかによって, 顧客の満足度に与える効果が異なるということを導き出しました.
顧客の立場から品質要素を分類することで, ただ品質を高めるだけではなく, より効果的に高い顧客満足を作り出すことができます.「魅力的品質」「一元的品質」「当たり前品質」「無関心品質」「逆評価品質」の品質要素はそれぞれ以下のような特徴があります.
魅力的品質
充足されなくても不満はないが, 充足されると高い満足を得られる品質要素
一元的品質
充足されなければ不満, 充足されれば満足となる品質要素
当たり前品質
充足されなければ不満, 充足されても当然(当たり前)と受け取られる品質要素
無関心品質
充足されていてもされていなくても, 特に不満も満足も引き起こさない品質要素
逆品質要素
充足されると逆に不満を引き起こす品質要素