QCストーリー~問題解決のセオリー~

2018年12月3日

QCストーリー

QCストーリーとは

企業で抱える種々の問題や課題をうまく解決するための手順としてQCストーリーがあります.
QCサークル・小集団活動での発表もこのQCストーリーが非常に高い頻度で用いられます.

このQCストーリーには,問題解決型QCストーリー課題達成型QCストーリーの2つの種類があります.

問題解決型QCストーリーが現状の問題点を解決することに目標設定の主眼を置いているのに対し,
課題達成型QCストーリーは新規事業などの未知の要素の多い目標を達成する際に用いられます.

 

問題解決型QCストーリーとは

問題解決型QCストーリーは現状の悪い部分(不備・不適合等)の分析から出発する方法です. 既に発生している何らかの問題に対してそれらを改善していく際に用います.
実際の現場における問題解決ではこちらの問題解決型QCストーリーが用いられることが多く見られます.

問題解決型QCストーリーの手順

問題解決型QCストーリーの手順は下図のようなフローで進めていきます.
段階ごとに様々な他のQC的手法(パレート図や特性要因図, ヒストグラムなど)を組み合わせていくと効果的です.

問題解決型QCストーリー

テーマの選定:

現状の問題点を明らかにし改善に取り組むテーマを決定します. 問題への着眼点はQCDPS(品質, 原価, 納期, 生産性, 安全)や工程に3ム(ムリ, ムダ, ムラ)がないかといった多様な切り口から検討します.
パレート図などを使って, 問題が改善できた場合の効果金額の大きいものを重点項目として選ぶなどの選び方もあります.

現状把握:

問題点の現在の姿を明らかにし, 事実を把握します.
4M(作業者, 機械, 原材料, 方法)などの切り口に着目し現在の問題点の具体的な状態を把握します.
対象にする特性値を決め改善前の状態を調べます.
問題点を明確に表すためヒストグラムや管理図, グラフ等を用いることがあります.

目標の設定:

対象とする問題の範囲を明確にし, 現状の特性値に対する改善後の特性値の目標値を決めます.
目標値は改善効果を明確にするため定量的に設定します.
目標には, 何を, いつまでに, どれだけという評価基準を具体的に設定します.

活動計画:

改善スケジュールを決め, データ収集, 要因の解析, 対策の実施などの役割分担(担当者)を決めます.

要因の解析:

問題に影響を及ぼしている要因の中から, 真の原因を絞り込んでいきます.
問題となっている現象の真の原因を追究し, その原因を取り除くことで, 問題を根本から解決します.

対策の検討と実施 :

問題の原因を取り除く複数の改善案を検討します.
その中から技術面・コスト面・作業性の面で実現可能なものを選択し実行します.

効果の確認:

対策後のデータと, 問題点の把握で測定したデータや目標値と比較し, 改善の効果を定量的に把握します.

歯止め・標準化と管理の定着:

改善を実施して効果があっても, 一時的なもので再び時間が経過してから元に戻ってしまっては意味がありません.
元の状態に戻らないように歯止めをかける必要があります.
改善後の状態を維持するためには, 設備的な改善(ポカヨケ)や, 標準化を図り定着させることが重要となります.

 

課題達成型QCストーリー

課題達成型QCストーリーは, 今までなかった新たな仕事や, 新たな課題,
あるいは従来に比べ非常に高い目標を掲げる場合など, 未知の要素が多い目標を達成するために使用されます.

課題達成型QCストーリーの手順

課題達成型QCストーリーの手順は下図のようなフローで進めていきます.

課題達成型QCストーリー
テーマの選定:

テーマの対象を具体的に選定します.

攻め所と目標の設定:

現状と課題(ありたい姿)との間にどれほどのギャップがあるのかを明らかにし, 目標を設定します.

方策の立案:

目標を達成するための方策を立案します.
攻め所から系統図などを使用して実行可能な具体的方策まで展開すると, 方策が絞り込みやすくなります.

成功シナリオの追求と実施:

課題達成型では方策に於いても未知の部分が多く, 不確定要素が多数あります.
そこで失敗と成功の可能性を事前に考慮した成功シナリオを事前に作成します.
この成功シナリオの作成時には, PDPC法を使うと方策が失敗した場合の次の対処が明確になり,
事前の見通しと進捗が管理しやすくなるので効果的です.

効果の確認:

成功シナリオを実施した結果と目標と比較し, その達成度を評価します.
想定通りに進捗しなかった場合, 成功シナリオの見直しが必要です.

歯止め・標準化と管理の定着:

課題達成型QCストーリーでも問題解決型QCストーリーと同様に,
改善前の元の状態に戻らないように歯止めをかける必要があります.
特に課題達成型では新規事業の立ち上げなどでは, 業務をルーチン業務として行えるように体制を整える必要があり,
標準化を図り定着させることが重要となります.

 

このようにQCストーリーに沿って改善活動を行うことで, 問題解決を合理的・効率的に進めることができます.
QCサークル・小集団活動での発表もこれらのQCストーリーに沿って行うとテーマ選定の背景やその根拠などが分かりやすく, スムーズに構成しやすくなります.しかしながらあまりにも何でもQCストーリーの型に嵌めすぎて, 本質的な部分を考えずマニュアル化してしまうといったことがないように注意が必要です.